―後記―

『闇はささやく』を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

もしかしたらお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、この作品は山本周五郎の 『合歓木の陰』のパロディのような形になっています。よーするに、ほぼ同じストーリーで (かなり端折ったり、変えたりしてますけれど)キャラクターが違うというモノになっています。
山本周五郎スキーの方がここにいらっしゃれば、もうすみませんとしか言いようのない出来になっています…。 ほんと、スミマセン。
でもこの「合歓〜」の話は大好きだし、兼続と妻の船(せん・お船の方とよく言われます)の設定を見つけたときに 「コレだ!」と食い付いてしまい、それから頭が先に進まなかったので、ついつい頭の腕の動くままに書いてしまいました。

そんな兼続と奥さんの設定というのは、ご存知の方も多いかと思いますが…

・兼続が直江家の娘・船に入り婿として入ったこと
・側室が一人もおらず、大変仲がよろしかったこと
・姐さん女房

とくに入り婿って言う所がネタとした良かったように思います。
いくら兼続が子どもの頃から神童の誉れ高き麒麟児であったとしても、やはり入り婿で、奥さんは年上、しかも上杉家の世継ぎを 謙信から聞き出した恩人(このとき聞き出した…というか、遺言を聞いたと公言して憚らなかった。このときの世継ぎが、幼い頃 からの兼続の主である)これ、明らかに嫁に頭上がらないよなあ…
まあ、無双の兼続はあんまりかかあ天下っぽくなかったので、今回のヒロインも年上という感じでは書いていないのですが。

話がそれました。
入り婿が良かったのは、兼続は謙信が死んでから本格的に上杉を動かし始め、船と結婚したのもちょうどその位。 仕事がめちゃくちゃ忙しかったのではないかな〜と思います。
あんまり家に帰れない上に、帰っても、家は自分のものというより嫁さんの実家。しかもすごい名家。
プレッシャーとか、嫁さん側に対する遠慮とか、いろいろ大変だったのかな…と思い、始めの(二三行ですけど)方は、兼続くんを ちょっとそっけなくしてみました。俺は急がしいんだよ!みたいな。

それに対する嫁の態度も、かなり素っ気無い(笑)というかきつい。
そういう立場の違いから来るちょっとしたすれ違いと、でも結局は仲良くなるという二つを書きたかったモノなので、その辺りを 少しでも感じていただけば光栄です。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。



2007/4/8 阿倍たちばな