「母上。蓮華草は恋を招くものなのですか?」 「え?」 突然の質問に、母は驚いたようにこちらを見た。覇は真剣な面持ちで彼女を見つめてい る。誰か想い人でも出来たのかしらと思って、優しく微笑んだ。 「灯籠屋の主人が言っていたのです」 あらぬ疑いを掛けられてはたまらんと、覇は急いで言葉をつないだ。 「いいえ。蓮華草は幸福を表すものですよ」 覇はびっくりして、「桃は」と呟く様に言った。その小さい声に母はすばやく答えた。 「桃は恋を表すもの。恋の奴隷、とか、心を奪われる、とか言う意味があります」 彼は唖然として、その次に親爺に騙された伯父を不憫に思った。このことは絶対父の耳 にいれてはならない。固く誓った長男坊だが、数日後、母によって父が知ってしまい、 伯父にしつこく言い寄っていることは知る由もなかった。 -後記- 今回出てきた花言葉 ・海棠(かいどう) <夏侯兄弟が母に買った花。中国原産で、和名を花海棠と言うそうです。落葉低木で桃色 の花をつける、大変かわいい花です。 温和、艶麗 ・蓮華草 あなたは幸福です、私の幸福、緩和する あなたが来てくださると私の苦しみがやわらぐ、感化 ・桃 辛抱、忍耐、愛、なつかしい日、あなたに心を奪われた、気立てのよさ、恋の奴隷