小さな背中がこちらに向けられている。孫権は何も考えずにその背を抱いた。特に何か
思うところが有ったわけではない。日の光を浴びて温かそうなそこを見ていたら、なんと
なく抱きたいと思っただけのことである。
「?」
 はきょとんとしている。特別驚いた様子は無いが、首だけをこちらに向けて疑問符
を浮かべていた。うずめた首のあたりに、ふわふわした髪が触れてくすぐったい。綺麗に
梳かれた黒髪に触れると、彼女はくすぐったそうに笑った。
「あったかい」
 はまわされた腕に指を絡ませながら、自分の胸の辺りに背中を預けてきた。ずり落
ちないように支えることは、彼女の体重からして容易であった。仁を抱いている時とは違
う温かさだ、と彼は思った。仁の場合はもっとふかふかとか、ずっしり、という感触だが
はその対極だった。このまま力を込めれば、彼女の身体はいとも簡単に砕けてしまう
ことだろう。少し力を強めてみる。はしばらく眠るようにして黙っていたが、次第に
苦しくなってきたのか「くるしい」と言った。しかし、力を緩めることはせずに「」
と名を呼んだ。彼女は呼ばれたことの嬉しさから、「なに」と言葉を返したが、優しい声
音とは裏腹にぎりぎりと締め上げる彼の腕を放そうともがいた。
「くるしい」
 のからだが紅潮してきたことが良く分る。うっすらと汗もかいている。胸の辺りに
熱い塊があるような感覚に陥って、たとえ様のない心地よさを感じる。
「くるしいよ」
 黒髪から垣間見える肌の美しさに釘付けになる。普段からは想像もできない程、艶かし
い何かがそこにはあった。
 は苦しそうにもがいた。身体をつかって彼の手から逃れようとするが、彼女のよう
な非力な者が、この自分に太刀打ちできる力を持っているわけが無かった。圧倒的な力の
差に、ますます彼女は喘ぐ。その行動が、熱が、自分をおかしくさせているのだと思った。

「ぅぁ…仲謀」
 名前を呼ばれて、すっと血の気が引いた。あわてて腕の力を緩めると、へなへなと床に
崩れ落ちたの肩をできるだけ優しく掴む。苦しかったろう、そう声を掛けようとした
が、自分が言っても効果がない気がしたので飲み込んだ。そして、ただ、すまないと平謝
りした。

 腕の所にうっすらと痣が残っている。とんでもない事をしてしまったという思いは勿論
あるが、その痣が自分のしるしのような気がして、嗜虐的な喜びを感じている自分が居た。
「すまない」
「ん…」
 やり直すように、今度は頭からふわりと包むようにして抱きしめる。は先ほどの苦
しみも忘れ、ぎゅっと腰にしがみ付いた。猫が甘えるように、犬がじゃれ付くように、彼
女は抱きしめられた、という事実についてだけの態度を返す。単純で、分りやすくて、優
しくて、形だけが大人のこの幼子は、疑うということを怒るということをきっと知らない
のだろう。
「いたくないのがいい」
 そう言ってふわりと微笑んだ彼女は、回した腕の力をすこしだけ強くした。


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意味なし小話権坊編。

なんかどうしてもサディスティックな感じになってしまうのはなぜでしょう(笑)
基本は攻めは男、受けは女なのですが、そこに攻め=S、受け=Mの色が濃く…!!

微妙なヘンタイさですみません…。